Jリーグのスタジアム規格とは

Jリーグは今やJ3まで拡張し、日本全国にプロサッカークラブが存在しており

オリジナル10などのビッグクラブから地域の企業やサポーターが支えるスモールクラブまで幅広く存在します。

一部複数クラブの共用などもありますが、クラブの数だけホームスタジアムが存在しており、

それぞれのスタジアムに個性もあってスタジアム訪問などもサポーターの楽しみの一つになっています。

そんなスタジアムに対して、JリーグはJ1,J2,J3の規格を設定しており、クラブのホームスタジアムが該当する規格をクリアしていないと、クラブがリーグ戦で昇格順位を獲得しても上位カテゴリに昇格できないなどということも起こりえます。

今回は、そんなJリーグのスタジアム規格について説明をしていきます。

また、おまけですが近年話題となっているACLのスタジアム規格についても説明していきます。

J1スタジアム規格

まずは、J1スタジアム規格から説明をしていきます。

クラブのホームスタジアムがJ1スタジアム規格を満たしていれば、J2でシーズン上位の成績を収め、自動昇格圏やJ1参入プレーオフの順位を満たしてそこで勝ち上がることができれば、来シーズンはJ1で戦うことができます。

逆に、J1スタジアム規格を満たしていないと、当該スタジアムをホームスタジアムとしているクラブチームはJ2のシーズン成績で自動昇格圏になる成績を収めても、昇格することなくJ2で来シーズンも戦うことを余儀なくされます。

自動昇格圏に入った場合はその時点でシーズン終了となるのはもちろんのことですが、J1参入プレーオフ圏に入った場合でも、プレーオフに参加することなく、そのままシーズンを終えることになります。

その場合、J2年間7位が繰り上げで参入プレーオフに参加することはなく、1クラブ減った状態でプレーオフが開催されます。

スタジアム基準詳細[J1]

公開されているJリーグスタジアム基準[2020年度用]をベースにJ1規格のスタジアムとJ2規格のスタジアムの違いについて見ていきたいと思います。

どのJリーグ規格でも満たしていないといけない、「サッカースタジアムであること」など当たり前のことについては説明を割愛します。

毎年更新されているわけではなく、2022年末時点でも2020年度用が公開されている中で最新のようです。

J1スタジアム基準(J2スタジアム基準との比較)

  • 入場可能数が15,000人以上(芝生席は含まない)
  • 椅子席で10,000席以上あること。(ベンチシートの場合は1座席当たり45cm以上あること)
  • VOR(ビデオオペレーションルーム)用車両の駐車場を確保すること
今回自分で調べてみて驚きましたが、J1とJ2のスタジアム基準としては座席数(要はスタジアムの規模)以外は要件にはほとんど無いようです。

一部の界隈でよく言われる、屋根がすべてを覆っていないといけないという基準についてですが、「新設及び大規模改修を行うスタジアムにおいて」は原則対応することという内容になっており、現行や小規模な補修などは対象となっていないということが資料から読み取れます。

J2スタジアム規格

続いては、J2のスタジアム基準について見ていきます。

スタジアム基準詳細[J2]

近年ではJ2からJ1に初めて昇格するクラブは少なくなっており、常連クラブが入れ替わっているような状態が続いていますが、対してJ3からJ2への昇格は毎年のように初めて昇格するクラブがでてきています。

そのような現実もあり、J2のスタジアム基準はあまり厳しくないのではという印象を持ちますが、実際どうなのでしょうか?

J2スタジアム基準(J3スタジアム基準との比較)

  • 入場可能数が10,000人以上(芝生席は含まない)
  • 椅子席で8,000席以上あること。(ベンチシートの場合は1座席当たり45cm以上あること)
  • 大型映像装置を設置すること
  • VAR用カメラ設置スペースを確保すること
  • テレビ中継カメラスペースが十分に設けられていること
  • 夏季は飲食物用の保冷車の駐車場を確保すること
  • 複数の入場券売り場の窓口を確保すること
  • 入場券購入者のための庇があり雨に濡れないこと
  • 飲食売店で温かいものが提供できること、電源・照明が確保できていること
  • 観客席以外でも飲食が可能なカウンターやテーブルを設けること
基準は細かくするとかなりあげられるので、多少省略しています。その他にもドーピングコントロール室やミーティングルームの設備に関してや場内放送、記録室の設計などについても一定以上の基準が設けられています。

近年ではサッカー専用スタジアム(ラグビー兼用含む)も増えてきていますが、J2のスタジアムは陸上競技場との兼用スタジアムもまだまだ多くあります。

その中でも、過去に開かれた国体で使用された競技場をホームスタジアムとして使用している例も多いですが、そのままだとJ2のスタジアム基準を満たしていないため、座席や大型ビジョンを増設することでJ2基準スタジアムとして改修している例なども見られます。

J3スタジアム規格

最後はJ3のスタジアム基準について見ていきます。

Jリーグのカテゴリ上は一番下位に位置しますが、ここではJFLや地域リーグから昇格するうえで必要な基準について説明していきます。

スタジアム基準詳細[J3]

J3基準を1つ1つ見ていくとかなり細かくなるので、サッカースタジアムとして当たり前なものを除いて特筆すべきものだけをピックアップしていきます。
  • 入場可能数が5,000人以上(芝生席を含む・メインスタンドに座席があること)
  • ピッチ内のいづれの場所においても1,500ルクス以上の照明があること
  • 得点を表示できるものを設置すること/出場メンバーを表示できるもの
入場可能数については、J1、J2の基準でも触れていましたが、J3も同様に入場可能数についての記載があります。座席数ではなく、入場可能数という表現になっているポイントとしては、J3の基準にある芝生席を含むというところにあります。

芝生席であれば、実際の座席の数ではなく、面積により入場可能数を計算されるため、確定の収容数ではなくみなしの入場可能数となるところです。

照明については、設置や明るさについて記載があります。長いリーグ戦を戦う上では当然ナイターゲームが行われます。十分に試合や観戦を行う上で照明について基準が設けられていることがわかります。

また、得点を表示できるものや出場メンバーを表示できるものという記載については、大型ビジョンはなくても電光掲示板があれば最低限の試合情報は入るため、設置が義務付けられています。前述ですが、J2以上であれば大型ビジョンは必須です。

スタジアム規格によって昇格できなかったクラブ

ここまで、J1からJ3までのスタジアムの基準について解説してきました。過去にはJ2シーズンで年間順位でJ1参入プレーオフ参加条件を満たしていながら、このスタジアム基準によってJ1昇格のチャンスがなくなってしまったクラブがあります。

2018シーズンの町田ゼルビアは、J2をシーズン4位で終える快進撃を見せていましたが、結果的にこのスタジアム基準によってJ1参入プレーオフに参加ができず、2019シーズンもJ2で戦うことになりました。

現在は、町田ゼルビアのホームスタジアムである町田GIONスタジアムは改修されており、J1基準となっており、あとは再び年間順位で上位に入るだけと準備は整っています。

ACLスタジアム規格

Jリーグのスタジアム基準以外にも、AFCチャンピオンズリーグ(通称ACL)にもスタジアム基準が設けられています。

ちなみに、AFCはAsian Football Confederation(アジアサッカー連盟)の略ですね。

ACLへの日本国内からの出場権は前年のJ1リーグ年間1位2位3位、前年の天皇杯優勝クラブの計4クラブとなっています。どちらも条件を満たすクラブがあった場合は、前年のJ1リーグ4位も出場対象となります。

スタジアム基準詳細[ACL]

ACLにおいてのスタジアム基準は、原則的にJ1の基準より厳しく設定されています。
  • 5,000席以上が個席かつ背もたれがあり、座席番号が付与されていること
  • 照明は1,800ルクス以上、決勝では2,000ルクス以上(Jリーグは何れのカテゴリも1,500ルクス以上)
  • チームベンチに20名以上が着席できること(Jリーグは何れのカテゴリも14名以上)
J1では座席数についての基準はあっても、座席番号や背もたれについての言及はされていません。

個席という意味では、ベンチ席であってもテープなどで1席あたり45cm以上の幅が確保でき例れば個席として認められるため、J1基準でもACL基準は満たしていることになります。

座席番号についても、スタジアムに指定席が5,000席以上あるのであれば、指定席は座席番号がないと指定席とは言えないためここにおいてもスタジアムによっては問題ないでしょう。

座席の背もたれという点においては、J1スタジアムでも設置されていないスタジアムもまだまだ存在していますので、ACL出場となったら改修工事が必要不可欠となります。

照明においても、J1基準である1,500ルクスのスタジアムも多いのが現状です。

チームベンチについても、20名以上ないスタジアムも多く存在しています。

ACLがホームスタジアム開催できないクラブ(ヴァンフォーレ甲府)

2022シーズン天皇杯でJ2クラブながら見事優勝したヴァンフォーレ甲府。

優勝と共に、ヴァンフォーレ甲府の2023年のACL出場が決定しましたが、喜ばしいニュースと同時に大きな問題が浮き彫りになります。

ホームスタジアムであるJITリサイクルインクスタジアムがACL基準を満たしていなかったのです。
ACL基準を主に満たしていない要素としては3つあります。
  • 背もたれ付き座席がない(現状はすべてロングシート。ACL基準は背もたれ付き座席5,000席以上)
  • 照明4基がすべて1,500ルクス(ACL基準は1,800ルクス以上、決勝は2,000ルクス以上)
  • チームベンチが14席(ACL基準は20席以上)
新スタジアムの話題が出たり消えたりしているヴァンフォーレ甲府のホームスタジアムですが、現時点で新スタジアム建設の決定の話はありません。

また、スタジアムをACL基準に改修するにしても、莫大な費用が掛かり、新スタジアムの建設の話題がちらつく現状では現スタジアムにお金をかけることで新スタジアム建設の話が遠のく可能性も考えられるため安易に資金を投入するわけにもいかない状況となっています。

山梨県内最大のスタジアムの他に県内に候補となるスタジアムもないため、ホームゲームの代替開催地として近郊の味の素スタジアムやサンプロアルウィンが候補に挙がっていますが、どこで開催されるかは今後の注目点となりそうです。

せっかくの快進撃の末に勝ち取ったアジアの舞台の試合をホームスタジアムで観戦できないというのは何とも歯がゆいですね。今回はACLを迎えられないとしても、今後のヴァンフォーレ甲府のスタジアム動向については大きな注目となりそうです。

ACL規格を満たしていないクラブのホームスタジアムについて

主な3つのACL基準を満たしていなかったJITリサイクルインクスタジアムの代わりには

近隣のACL規格を満たしたスタジアムをホームスタジアムとして採用することになりました。

代替となったのは国立競技場。

ACLのホームスタジアムとして国立競技場を使用した初めてのクラブという誇らしいというのもありますが、

反面でクラブの本来のホームスタジアムでACLが開催できない不名誉なことや、

地元に海外からの観客が呼び込めないなどチャンスを逃した感は否めません。