【ルール紹介】アディショナルタイム/オフサイドについて

サッカーは見ているだけでも何となくルールがわかるスポーツです。
実際のところは多くの細かいルールが存在しており、そんなルールを正しく理解して観戦することでより楽しむことができます。

多くの人は概ねのルールを理解して観戦していると思いますが、あくまで完全に理解しているわけではなく、「概ね」を理解しているに過ぎないといったことを感じることがあります。そこには実際のルールとの認識違いや知識の不足なども要因であり、また、日々サッカーのルールが変化しているところも関係しているでしょう。

観戦するうえでの「認識しているルール」と「実際のルール」の違いについて、特に認識違いが見受けられると筆者が感じるアディショナルタイムとオフサイドについて解説をしていきたいと思います。
正しい判定にもかかわらずなぜ?どうして?と疑問をもって観戦している方の参考になればと思います。

アディショナルタイムについて

アディショナルタイムとは

Jリーグで行われる試合は1試合あたり90分間と表現されることが多いです。ただし、実態として試合は前半と後半を合わせて93分や95分など90分より少し多い時間行われています。

この90分の設定時間に対し、長めに取られる時間のことをアディショナルタイムと呼びます。

試合では第4の審判(選手の交代などに対応)が前半後半45分経過時に緑色の文字が表示された電光プレートを掲げていることを見たことがあると思います。そこに表示されている数字がアディショナルタイム(分)です。

試合時間の90分は前半45分と後半45分に分かれていますが、前半後半それぞれの45分の後に1分や2分など試合時間が追加されるのを見たことがあると思います。アディショナルタイムがある場合、プレー時間は前半の試合時間が46分、後半が48分などとなります。

ちなみに、昔はロスタイムなんて呼び方がされていましたが、ロスタイム(失われた時間)という意味合いが実態とあっておらず、2000年代後半に呼び方が見直されて現在のアディショナルタイム(追加時間)となりました。2020年代半ばとなった今でも、アディショナルタイムという呼び方は長いため、ロスタイムと呼ぶ方も少なからずいますし、まだまだ死語にはなっていません。また、Additional Timeの頭文字をとって「AT」と略されます。

アディショナルタイムが増える仕組み

では、アディショナルタイムはどのように追加されるのかという問いに対しては、サッカーの試合を見ている人であれば何となく答えることができると思います。

前半、後半それぞれの45分の試合時間でプレーが中断された時間を45分経過後に追加されます。このプレーが中断された時間こそがアディショナルタイムの正体で、1分中断された場合は1分追加、5分中断された場合は5分追加という具合に45分の試合時間に加えて試合が行われます。

プレーが中断されても、45分の試合時間は時計が止まることなく進行します。サッカーの中継などでも表示されている時間がそのまま進んでいることを目にしたことがあると思います。

アディショナルという言葉の通り、時間が「追加」されますが、実態としては中断時間の「補填」であるとも言えます。中断時間となるものは以下のものがあげられます。
  • 選手交代にかかった時間
  • ゴールが決まったことによる中断で、試合が再開されるまでに要した時間
  • 負傷者の搬出時間や負傷具合の確認にかかった時間
  • ファウルによりイエローカードもしくはレッドカードを提示した時間
  • VAR(ビデオ アシスタント レフェリー)での確認に要した時間
この辺はサッカーの試合を見てきた人であれば知っている人も多いように思います。これらにより試合が中断された時間はアディショナルタイムに追加されます。

一方で、実は「中断時間」に含まれない中断時間も存在します。ややこしいですね。具体的には以下のようなものが、「中断時間に含まれない中断時間」に該当します。
  • フリーキック(FK)やペナルティキック(PK)、コーナーキック(CK)を行う時間
  • スローインの時間
要は、セットプレーにかかる時間は中断時間としてみなされません。

アディショナルタイムが提示された時間通りに終わらない理由

アディショナルタイムは応援しているクラブがリードしている状況であれば早く試合が終わってほしいと思い、短い時間を望むでしょう。反対にリードされている状況や同点の状況であと1点が欲しい状況であれば、なるべく多くのゴールチャンスを向かるため長い時間を望むものです。特に試合の後半のであれば、サポーターのアディショナルタイムの時間に対する気持ちは強くなります。

前後半の45分経過時に、追加されるプレー時間が第四の審判や大型ビジョンにより掲示され、アディショナルタイムが始まります。

掲示される時間は1や4など整数で追加時間(単位は分)が表示(大型ビジョンの場合は1minなど)されます。わかりづらいですが、例えば、3と表示された場合は3分0秒から3分59秒の間というようにおよそ1分の幅があります。

この場合、基本的には3分を過ぎたタイミングでプレーが切れたタイミングで前半終了もしくは試合終了の笛が吹かれます。笛が吹かれるのは主に攻守が変わるタイミングで、ボールがタッチラインを割りゴールキックになった場合や、攻撃側のボールを守備側が奪ってマイボールにしたりクリアした場合などが該当します。また、時間を過ぎてバックパスやディフェンダー間でのパス回しなど試合に動きが出ないような場合も終了の笛が吹かれます。

反対に、プレーが切れてもそのまま攻撃側のスローインやコーナーキック、フリーキックなど攻守の交代が発生しない場合は、試合が続行されることが多いです。

オフサイドについて

オフサイドとは

サッカーを長年見ている人でも分かっているようで分かっていないルールの1つがオフサイドです。ものすごくざっくり説明すると、攻撃側(ボールを持っている)のチームの選手が、オフサイドポジションにいる味方選手にパスを出すとオフサイドになります。

ざっくりしすぎですね。もう少し詳しく説明していきます。
  1. 後方から2人目の守備側の選手より前方にパスを出した場合(オフサイドラインを超えたパス)
  2. 1を相手陣地で行った場合
後方から2人目の守備側の選手より前方にパスを出した場合、オフサイドとなります。このとき、ポイントとなるのがパスを受ける選手の位置パスを出すタイミングです。

まず、パスを受ける選手の位置について説明しますが、ここでキーとなるのは守備側の選手です。ゴールラインから数えて2番目にいる守備側の選手の位置がオフサイドラインとなります。オフサイドラインより相手のゴールライン側にパスを受ける攻撃側の選手がいるとオフサイドとなります。ただし、パスをオフサイドラインより前方で受けた場合でもオフサイドにならないことがあります。

なぜオフサイドにならない場合があるのか。ポイントはパスを出すタイミングです。後方からパスを出す瞬間に攻撃側の選手がオフサイドラインより前方にいてその後パスを受けた場合は前述の通りオフサイドになります。反対に、パスを出す瞬間にパスを受ける選手がオフサイドラインより後方にいさえすればオフサイドになりません。パスを出す瞬間にオフサイドラインの後方にいて、受けるときに前方にいれば位置によってはゴールキーパーとの1対1の局面を作り出すことも可能です。

また、スローインやコーナーキックではオフサイドは適用されません。ゴールキックも攻撃側の陣地からプレーされるためオフサイドはありません。反対に同じセットプレーでもフリーキックはオフサイドが適用されます。

試合の中でオフサイドが重要なルールであるのは、大きなチャンスとなるパスを通そうとする攻撃側とそれを阻止しようとする守備側の駆け引きがそこにあるからです。

現在のオフサイドルール

ここまで述べたのは基本的なオフサイドのルールです。基本的なオフサイドのルールは日ごろからサッカー観戦している人であれば何となくでもわかっていることでしょう。現在のオフサイドのルールという項目を設けたのは、オフサイドのルールは改訂が行われていることや、ぱっと見ではわかりづらい細かい定義があることです。試合を見ていると「今のはなんでオフサイド?」という発言が現地観戦やSNSでも以前から減っていない印象です。この裏にあるのが細かいルールがサッカー観戦している人に浸透していないためだといえます。
では、現在のオフサイドルールについてですが、ポイントとなるのはオフサイドラインの位置についてです。

現在のルールではパスを出した瞬間にオフサイドラインの基準となる相手ゴールラインから数えて2番目にいる守備側の選手より少しでもパスの受け手となる攻撃側の選手の体やユニフォームの一部でも前方にはみ出していたらオフサイドになります。

現在のルールを象徴するものとして、2024年のパリオリンピック準々決勝日本代表対スペイン代表の試合で細谷の1ミリとして話題になりました。気になる方は調べてみてください。

以前はオフサイドラインに一部でもパスの受け手となる選手の体の一部でも残っていればオンサイドとしてプレーは続行されていました。

このルール変更が良かったのか悪かったのかは今も議論されていますし、どちらが正解というのもありません。小さなルール変更のように見えますが、試合結果を左右する大きなルール変更というのが実態となっています。

オフサイドにまつわる用語

簡単なようで奥が深いオフサイド。オフサイドはルール変更だけでなく、知っておくとよりサッカー観戦が楽しめる用語があります。そんなオフサイドにまつわる用語についても紹介していきます。

戻りオフサイドとは

戻りオフサイドとは、パスを受ける選手がオフサイドラインより手前でパスを受けたにもかかわらずオフサイドになることを言います。オフサイドラインより手前でパスを受けていたらオフサイドではないじゃないかと思うかもしれませんが、「パスを受けたタイミング」はオフサイドの論点にはなりません。

オフサイドになるのはあくまで「パスを出したタイミング」でオフサイドラインより相手ゴールライン側にパスの受け手となった選手がいたかどうかです。つまり、ことは単純で通常通りのオフサイドということです。

戻りオフサイドは、「パスを出したタイミング」でオフサイドラインより相手ゴールライン側にいたパスの受け手が「パスを受けたタイミング」でオフサイドラインより手前にいたことでオフサイドの判定となったことを言います。

オフサイドディレイとは

オフサイドが発生したタイミングですぐにオフサイドと判定されず、遅れてオフサイドと判定されることをオフサイドディレイと言います。要は、オフサイドディレイは審判が意図的にその場でオフサイドを宣告せずに後からオフサイドを宣告するということです。

なぜオフサイドしていると審判が認識しているのに、その場でオフサイドが宣告されないのかとの疑問が出てきます。意外かもしれませんが、ここでカギとなるのはVARの導入です。

明らかなオフサイドであれば、その場でオフサイドが宣告されます。オフサイドディレイが行われるのは、オフサイドと思われるが、審判がオフサイドと断言できない場合です。昨今のミリ単位を求められるオフサイドを人の目で見極めるのは困難です。ましてや激しく縦に動くボールを常に副審が走りながら真横から見ることは実質不可能です。また、際どい場面では副審がオフサイドフラッグを上げても主審がオフサイドディレイを適用していったんプレーを流します。オフサイドディレイが行われると、いったんその場で流して攻撃側のプレーが切れるまでプレーが続行されます。

審判がオフサイドをいったん流す理由は、誤ったオフサイド宣告でプレーを止めて攻撃側の得点機会を奪ってしまわないようにするためです。プレーが切れたり、得点が決まった後にオフサイド宣告されるのは明確にオフサイドしていたことが確認が取れたためです。この確認はVARで行われます。JリーグではJ1で採用されているルールで、VARが採用されていないJ2,J3では通常通りその場でオフサイド判定が下されます。

オフサイドトラップとは

オフサイドにかかわる言葉としてオフサイドトラップも外せません。オフサイドトラップは守備側の選手が攻撃側の選手がオフサイドポジションとなるようオフサイドラインをコントロールする戦術です。

分かりやすい例でいうと、守備側の選手が自陣の比較的浅い位置(センターラインとゴールラインのちょうど間当たり)でファールをしてしまい攻撃側のフリーキックになるとします。直接フリーキックをゴールするのは難しいため、ゴール付近にいる攻撃側の選手に合わせての得点を狙います。当然攻撃側のボールの受け手となる選手もオフサイドになることを理解しているため、オフサイドラインの手前を陣取りますが、このフリーキックが蹴られる直前に守備側の選手がオフサイドラインをセンターライン側に寄せて、攻撃側の選手がオフサイドポジションとなるようなラインコントロールが該当します。攻撃側の選手をオフサイドポジションとなるよう罠にかけるようであることからオフサイドトラップと呼ばれます。

フリーキックだけでなく、流れの中でも縦パスから裏への抜け出しを阻止するためオフサイドトラップが仕掛けられることもあります。
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