【Jリーグ30周年】こんなに変わっていたサッカー用語

Jリーグが発足して30年、プロサッカーリーグが初めて日本で開幕したときの熱狂は

つい最近のようにも思えますが、冷静に考えると30年という年月はなかなか長いもの。

その中で昔は当たり前に陽に使っていたサッカー用語がいつの間にか消えていたり、

反対にここ最近で定着してきた言葉も意外と多くあります。

今回はそんなサッカー用語がどのように変わっていったかを見ていきたいと思います。

消えたサッカー用語

まずは、Jリーグの創世記に使われていたもののいつの間にか耳にしなくなった言葉を見ていきたいと思います。

サドンデス(方式) ⇒ 消滅

Jリーグでも最序盤にのみ使用されていた言葉の1つにサドンデスという言葉があります。

使用されていた期間は2年間程度と短いですが、インパクトのあるこの言葉の意味が分かる方は多いのではないでしょうか。

Jリーグが始まったばかりのころのルールは、試合で前後半90分間で決着がつかなかった場合に、延長戦を行って決着をつけていました。

その延長戦前後半30分の間に先にゴールを決めたチームが勝利するといった方式のことをサドンデス方式と呼んでいました。

例えば、延長前半7分に片方のチームが点を決めた場合に、残りの延長前半8分と延長後半15分の計23分が残っていても、その23分は試合を行うことなく強制的に試合終了となります。

点を決められたチームはその時点で敗北が確定、その様子が突然死、つまりサドンデスであることからこの名前を使用されてきました。

ただし、突然死という言葉のインパクトが強く、縁起も良くないなど日本国内で忌み嫌われたためJリーグでも早々に使われることがなくなりました。

ただし、延長戦で一方が先に得点した段階で試合が終了するルールは継続され、そのルールは別の名前で呼ばれることとなりました。

Vゴール(ゴールデンゴール) ⇒ 消滅

サドンデスという言葉はサッカー界隈で使われなくなったものの、

延長戦で先に得点したクラブが勝利するルールはそのまま引き継がれ、意味合いはそのままにVゴールという呼び方となりました。

1998年のフランスワールドカップと2002年の日韓ワールドカップではゴールデンゴール方式という名前でかつて国際試合でも運用されていました。

J1リーグでは2003年に、J2リーグでは2002年に廃止され、国際大会を含めてVゴール方式は姿を消していきました。

キーパーチャージ ⇒ 消滅

消えて言った言葉の一つにキーパーチャージがあります。

以前はゴールエリアでボールを保持していないゴールキーパーと競り合うことは、正当性のある競り合いであってもコンタクトしてしまった場合、キーパーチャージとしてファウルがとられていました。

現在はというと、正当なものであればゴールキーパーと相手プレイヤーの競り合いは許容されています。コーナーキック時のゴールエリアのポジション争いでゴールキーパーと選手が接触しているシーンは当たり前のように見かけますね。

キーパーチャージは1996年まではJリーグでもルールとして運用されていましたが、ルール改訂により消えていきました。ゴールキーパーに有利すぎるルールだったということが要因のようです。

言うまでもなくではありますが、ボールをキャッチしたゴールキーパーにあとから妨害するような接触をすることは以前から変わらずファールとなっていました。

変化したサッカー用語

続いて変化したサッカー用語を見ていきます。

自殺点 ⇒ オウンゴール

今は自殺点と呼ぶ人はほとんど見かけませんが、オウンゴール=自殺点であることを理解している人は多いでしょう。

説明不要ですが、味方選手のクリアやパスが味方のゴールを割って失点してしまうことを言います。

Jリーグや国際試合でもそれなりに見かけますね。

相手チームのシュートに触れたことで単にコースが変わってゴールしてしまったり、シュートがポストに当たって跳ね返ったボールが味方選手の体にあたってゴールしてしまうような意図せずゴールとなってしまったものはオウンゴールとはならずに相手選手のゴールとなります。

ここでは説明をしませんが、Jリーグでは海外で起きたとある事件をきっかけに1994年途中から呼称がオウンゴールに代わりました。

直接的で物騒な自殺点という呼び方は、Jリーグでは1年ちょっとしか使われていませんでしたが言葉のインパクトが強く一回聞くと頭に残りますね。

言葉が変わってよかったと思います。

ロスタイム ⇒ アディショナルタイム

以前使用されていたロスタイム(失われた時間)という言葉は、真逆の意味を持つアディショナルタイム(追加時間)に代わりました。

アディショナルタイムという言葉が主に使われるようになったのは2010年からでそれまではロスタイムと呼ばれていたことを考えると、ロスタイムと呼ばれていた期間は意外と長いことがわかります。

呼称は変わっても意味合いは変わらず、前半と後半にそれぞれ45分の試合時間に続けて数分程度追加される時間のことを指しています。

基本的には、試合中の選手の後退にかかった時間や選手の負傷確認や負傷による搬出、カードの提示やVARによる確認時間がアディショナルタイムとして試合時間が追加されます。

VAR導入により近年のJ1リーグではアディショナルタイムの時間が長くなる試合も多く見られるようになってきています。

センタリング ⇒ クロス

センタリングという言葉は消えたというわけではないですが、次第にクロスという言葉に置き換わっていきました。

どちらも、相手サイドのゴールライン付近でサイドから中央(ゴール前)に向けてボールを大きく蹴り入れてシュートやヘディングなどでゴールを狙うプレーのことを指しますが、

現在はクロスと呼ぶことが主流で、単にクロスと呼ぶだけではなく言葉も使い分けがされるようになっています。

クロスを上げる距離での使い分けとしては、ゴールに近い側の味方選手をターゲットとしたクロスはニアへのクロスまたはアーリークロスと呼ばれ、遠い側をターゲットとしたものはファーへのクロスと表現されることが多いです。

また、ゴロでのクロスはグラウンダーのクロスと呼ばれ、主にヘディングをターゲットとした空中へのクロスと使い分けをされています。

オーバーヘッドキック ⇒ バイシクルシュート

オーバーヘッドキックもいつしかバイシクルシュートと呼ばれることが多くなりました。

必ずしも打点が頭の上とは限らないため、バイシクルシュートという表現が汎用的だといえそうです。

主にややマイナス方向の空中に上がってきたクロスに対してゴールと反対を向いたまま後転するように自身の頭の上から足にミートさせて放つ難易度が高いシュートであり、豪快なシュートがネットに突き刺さることで決めた側のサポーターは大いに沸くことは今も昔も変わりません。

一方で守備側はボールがどこに跳んでくるか予想しずらいシュートとなり、枠内に打たれた場合はやや決まりやすい傾向があるように見られます。

また、決められた側からしたら仕方がないとはいえやや屈辱的になります。

パスカット ⇒ インターセプト

パスカットは厳密には今も使われているため置き換わったと言い切ることはできませんが、パスカットの一部はインターセプトと呼ぶことが多くなりました。

ショートパスからロングパスまで広い意味で相手のパスの意図を持ったボールを奪うことをパスカットといいますが、

その中でもインターセプトは主にショートパスからミドルパスのようなパスを予測して相手から味方ボールになるよう完全に奪いきることを指します。

トーナメント(方式) ⇒ ノックアウトステージ

トーナメントという言葉は日本国内でも定着していますが、本来の英語での意味合いとしては大会そのものを指しており、勝ち抜きの仕組み自体とは厳密には意味が異なります。

勝ち抜きの仕組みはノックアウトステージとの呼称が国際試合では一般的で、日本プロサッカー界でも2013年ごろから使用され始め、2015年には呼称をノックアウトステージに統一をしています。

サッカーの実況などを聞いていると、トーナメントという言葉は使っておらずノックアウトステージもしくはノックアウト方式といっているのがわかると思います。

使われるようになった言葉

以前は使われていなかったものの、ルールの変更や海外で使用されているサッカー用語の流入、サッカーの戦術が細分化されていったことなどにより日本国内で使用されているサッカー用語は日々増えてきています。

ポジションや役割の細分化はかなり多く、ここではごく一部だけですが主な用語を紹介していきたいと思います。

DOGSO

ドグソと読みます。Jリーグでは2018シーズンから聞かれるようになった言葉で、決定的な得点機会の阻止である(Denying Obvious Goal Scoring Oppotunity)を略して呼称としています。

ディフェンシングファウルの一種で、ザックリいうとセットプレーを除いた流れの中で攻撃側が圧倒的な有利な状態でゴールチャンスを迎えているときに守備側がファウルをしてしまった場合にDOGSOとなります。

DOGSOが適用された場合、ほとんどの場合はレッドカードが提示されることになります。

攻撃側が圧倒的に有利な状態であることには条件があり、もちろん何でもかんでもDOGSOとなるわけではありません。

DOGSOに認定される条件としては、

攻撃側のボールを持っている選手と相手ゴールキーパーが1対1の時に攻撃側の選手を倒してしまうなど攻撃側が数的優位になっている状態であること、

攻撃側のボールを持っている選手とゴールまでの距離が近いこと、

フィールド内のプレー全体が相手のゴール側に迫っていく攻撃の流れとなっていること、

攻撃側のボール保持者がボールをコントロールできる状態であること

といった条件をすべて満たしている必要があり、簡単には発生しません。

相手ディフェンダーの裏を狙った縦パスに反応して味方フォワードが抜け出したシーンなどは試合中に何度か見かけることがあると思いますが、その際にタックルなどで相手選手を倒してしまうなどのファウルを犯すとDOGSOになります。

このようなシーンでDOGSOにならないようにするためには、抜け出した選手に追いつき攻撃を遅らせて味方の帰陣を待って数的優位を作りDOGSOにならない状況を作ってからボールを奪うか、うまく選手にコンタクトせずボールだけ奪うかクリアするなど駆け引きをうまくするかが主な回避方法となります。

まだまだ新しいルールではありますが、普段からサッカーを見ている人にはかなり浸透してきているかなという印象があります。

ビルドアップ

ビルドアップはサッカーにおけるオフェンススタイルの1つで、主にゴールキーパーやセンターバックからパスを中心に攻撃を組み立てる戦い方をのことを言います。

攻撃の速度は出ませんが、横に縦にパスを回し、時にはドリブルで持ち上がり相手の守備をかき乱しながら前線を押し上げていくような堅実な戦い方だといえます。

主にゴールキックからや味方陣地の深い位置で相手からボールを奪った後にビルドアップを見ることができます。

反対に、前線に深めのミドルレンジのパスを出してディフェンダーの裏を狙ったり、深い位置からは前線を一気に押し上げるロングパスやカウンター、中盤で奪って速攻を仕掛けるショートカウンターなどもスピード感のある攻撃の方法がとられることもあります。

セカンドボール

セカンドボールはこぼれ球と呼ばれることもあり、1つのプレーの後のどっちつかずのボールを表します。

セカンドボールとなる主なシーンとしては、前線に向けて蹴られたゴールキックからの空中戦で弾かれた場面や流れやクロス、セットプレーなどからゴールキーパーやディフェンダーが弾いて選手が密集したところにボールがこぼれた場面で見ることができます。

また、セカンドボールを拾うことで優位に試合を進めることができ、ゴール前であればそのまま得点につなげることができるなど直接的に大きなチャンスやピンチにつながる重要なものです。

ディフレクション

シュートを打った際に他の選手にあたってコースが変わることをディフレクションと言います。

ディフェンスがシュートブロックに入ってシュートが枠外に逸れるといった場合が多いですが、

反対に予測不能となったボールの軌道をゴールキーパーが止めることができずそのままゴールになったりするシーンも見られます。

アンカー

主にセンターバックでゴールキーパーを除いて自陣の一番深い位置を守備する選手のことを言います。

シャドー

2列目やトップ下などとも呼ばれます。センターフォワードの少し後方で攻撃に参加するプレイヤーです。

ターンオーバー

基本的にはリーグ戦は土日に行われます。

ただし、近年ではリーグの長期化やカップ戦などの試合もあり水曜日の試合なども増えており、

選手が十分に休養を取れず、試合が開催されることもしばしば起きているのが現状です。

そのような場合に、普段はある程度固まったスタメンで試合を戦いますが、

疲労によるパフォーマンスの低下や普段スタメンではない選手が実践で活躍する場として

選手を多く入れ替えて試合に臨むことをターンオーバーと言います。

トップハーフ・ボトムハーフ

Jリーグでは順位表で上位半分のクラブをトップハーフ、下位半分のクラブをボトムハーフと呼びます。

主にDAZNでのリーグ順位表示で解説を聞くことができます。

例えば、リーグ所属クラブが20クラブあったときは、上位10クラブがトップハーフ、下位10クラブがボトムハーフに該当します。

VAR

VAR(ブイエーアール)ばVideo Assistant Referee(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の略で

近年採用されるようになった審判の判断を映像を使ってサポートする仕組みです。

試合における判断で明白な誤りをなくすことが目的で、

審判の判断ミスをあぶりだす目的ではありません。

VARが採用される場面としては、

「得点」「PK」「退場」「警告退場の人違い」が発生したシーンに限られ、

ファールの判断が適切だったかやスローインがどちらのボールなのか、ゴールキックなのかコーナーキックなのかの判断には使用されません。

VARの確認にかかった時間はアディショナルタイムに加算されるため、試合によっては10分近くプレー時間が加算されることもあります。

JリーグではJ1リーグのみで採用されており、J2,J3には導入されていません。(VARが導入できる設備がスタジアムにある必要があります)

VARがJ2、J3で採用されていないのは、導入しないというよりは年間1億円以上とも言われているコストの拠出が困難だということ、そしてVARのオペレーターの育成が間に合っていないということが要因に挙げられます。

ただし、J2、J3でもVARが必要とされるようなシーンも少なからず発生しており、毎節どこかの試合で問題となっていることから導入の要望が各地で上がっています。

すぐのVAR導入は難しいと思われますが、現在新たに費用面とオペレーター育成のハードルの高さを抑えた「VARライト」の導入の検討が始まっているという情報も出てきており、あくまで将来的な話にはなりますが、J2,J3の環境は変わっていきそうです。

プロ野球にもリクエスト制度といったサッカーとは似て異なるビデオ判定があるように、映像による判定支援制度がスポーツ界に広がっていっています。

SAOT

SAOT(エスエーオーティー)はSemi-Automated Offside Technologyの略で

半自動オフサイドテクノロジーと呼ばれ、選手やボールの位置を正確にとらえオフサイドかどうかを見極めるシステムです。

2022年のワールドカップでも話題となりました。

GLT

GLT(ジーエルティー)はGoal-line Technology(ゴールライン・テクノロジー)の略で

ホークアイと呼ばれるカメラと磁場センサーによりボールがゴールマウスに完全に入ったかを機械的に判断し、ゴールしていた場合に直ちに審判の腕時計が振動するようになっています。

ゴールが見えなくても、ゴールしたかがわかるようになっている仕組みです。

ただし、この仕組みだけでは際どいオフサイドなどがわからないため得点シーンではSAOT(準自動オフサイド判定システム)との組み合わせで使用されます。

欧州の一部のサッカーリーグやワールドカップなどの国際大会では採用事例が見られます。

Jリーグでは現在導入はされていませんが、導入費用が高額であることも1つの理由になっています。

秋春制

欧州リーグなどでは一般的ですが、8月から9月にシーズンが始まり、5月から6月にシーズンが終わる制度の事です。秋に始まり春に終わるため、秋春制(あきはるせい)と呼ばれています。日本だと8月下旬から5月中旬にシーズンが終わり、間に冬季中断期間を挟むような運用がとられることになります。中断期間は12月中旬から2月中旬までとなり、現在の運用方法のシーズンオフとなっている期間とほぼ同じ期間となります。

対して現在のJリーグで取られている2月から3月にシーズンが始まり、11月から12月にシーズンが終わる制度を春秋制(はるあきせい・しゅんじゅうせい)と呼ばれます。

Jリーグでは2026-27シーズンから秋春制の正式採用が決まっており、シーズン前のスプリングカップの採用も発表されています。

秋冬制を取り入れることで、欧州とシーズン開催時期が重なりシーズンオフでの選手の移籍もスムーズになるなど、Jリーグ活性化のメリットが見込むことができます。

現地観戦するサポーターとしても、スタジアムへのアクセスや観戦時の防寒対策などにいろいろ検討しないといけないこともあり、今後どうなるのか注目です。

チャント

今やゴール裏席で応援している人で知らない人はいないであろう言葉、チャント。日本語にすると応援歌という意味になりますが、サッカーでは歌う他に、手拍子する、飛び跳ねる、手を掲げるなど一連の行動の事を表しています。解釈によるところもありますが、ブーイングもチャントの一種ととらえられることもあります。熱いゴール裏には必ずチャントがある。選手だけでなく、選手を鼓舞するためにサポーターも戦っているというのがチャントに表れているといえます。

インスイング・アウトスイング

主にコーナーキック時の解説で、インスイングやアウトスイングという言葉を耳にする機会が増えてきています。クロスの一種としてとらえるとわかりやすいかもしれません。

インスイングシュートはゴール外側に蹴ってからゴールに向かうように回転をかけてボールを入れることで、直接ゴールを狙う場合やゴール前に詰めている味方選手がヘディングなどで軽めに合わせるだけで相手に防ぐ間を与えずに得点を狙うことができます。一方で、直接ゴールキーパーにキャッチされやすかったり、誰にも合わずにそのままゴールラインを割ってしまうなどのデメリットもあります。内巻きなんて表現をされることもあります。

アウトスイングシュートはゴールライン側からゴールから離れるように回転をかけてボールを蹴り入れることで、相手ゴールキーパーやディフェンダーが守りづらくなり、味方選手がボールに合わせやすくなります。こぼれ球も後方に控えている味方選手が拾いやすくなるなどのメリットもありますが、直接合わせる場合はゴールから距離があり、相手選手が反応しやすいといったデメリットがあります。外巻きなんて表現をされることもあります。

さいごに

振り返ってみると30年で日本サッカーを取り巻く環境の変化もあり、

ルールや使われる言葉も大きく変わったことがよくわかりました。

ここで紹介したのはそんな変化のごく一部ですが、

他にも変わった言葉やこれからの変化していく言葉にも今後注目です。