コロナで静かになったスタジアムにチャントが戻るまで

映像を介しての観戦も良いですが、

スタジアムならではの圧倒的にダイナミックな雰囲気の中で観戦することは

他にはかえられない熱くなれる楽しみ方だといえます。

熱い雰囲気を作り出すものの一つにサイドスタンドからの応援があります。

そんなチャントは、2000年シーズン第2節(J3は第1節から)から新型コロナウイルス感染対策で長らくスタジアムからチャントが歌えなくなるというサポーターにとっても選手にとってもつらい期間がありました。

2年以上の長い休止期間を開け、2022年シーズン後半に長らく禁止されてきた声出し応援が

検証期間を経てようやく一部解禁され、

2023年からスタジアムに全面的な制限撤廃によりスタジアムに活気が戻ってきました。

今回は過去を振り返って、休止してからスタジアムに全面的にチャントが戻るまでを解説していきます。

Jリーグが中断するまで

スタジアム全席での声出し応援はコロナウイルスの感染拡大への対策により、

2020年シーズンの開幕戦を最後に、

2020年シーズン第2節から2022年シーズン終盤まで完全な開放がされない状況が続きました。

そもそもスタジアムで観戦できない(無観客試合)が長い間導入されることや、

下位カテゴリへの降格が一時的に運用停止になるなど、特に2020シーズンはコロナウイルス感染拡大の影響をもろに受けました。

マスクの着用が義務付けられるなど、2021シーズンには現地観戦は解放されるようになり、2022シーズンにも一部エリアでの声出し応援も解放されるようになるなどスタジアムの日常が徐々に戻ってくるようになりました。

2023シーズンでは、コロナウイルス感染前の状況が戻ってきており、ゴール裏(サイドスタンド)ではホームサポーター、アウェイサポーターが声出し応援でしのぎを削っています。

2020シーズン開幕戦(第1節)まで

2020シーズン開幕戦までは、ホームスタンド、バックスタンド、サイドスタンドを問わず、チャントなどの声出し応援が可能でした。

開幕戦は2020年2月末で、新型コロナウイルスが流行りだした初期のころでマスク着用などの制限はなく、一部マスクをつけて応援する方などもいたような状態でした。

このころにはJリーグ以外のプロスポーツや遊園地などでも試合延期や閉園などの動きはあり、

Jリーグのシーズン開幕がされるのか注目されましたが、結果的に開幕戦は開催され、第2節以降は延期という形で対応されました。

J3においては、2020シーズン開幕戦から延期されることとなりました。

2020シーズン再開まで

中断期間はしばらく再開の目途が立たず、サポーターは日常からJリーグが消える長く苦しい期間を過ごすこととなりました。

先の見えない中断期間の中、5/29にJリーグからリーグ戦の再開が発表されました。

発表の内容は、およそ4か月のシーズン中断期間を開けて、2020シーズンはJ1は7月から、J2およびJ3は6月末から再開されるといったものでした。

リーグ戦再開の喜びもつかの間、発表されたのはリモートマッチと呼ばれる無観客試合での開催といった内容。

DAZNなどの放映はあるものの、現地観戦ができないという寂しい内容にがっかりするものの

世の中としては、不要不急の外出をしない、黙食する、公共の場ではマスクを着用するといったレジャーや旅行などをとてもできるような環境ではなかったため半ば仕方がないといった状況でした。

この間に2020シーズンの及び2021シーズンの大きな運用ルール変更がありました。

観戦についてのルール変更については後述しますが、

各カテゴリの昇格や降格についてのルールについてリストアップします。
  • 2020シーズンの運用変更
    • J1からJ2への降格措置なし
    • J1参入プレーオフの休止により、J2からJ1へ昇格できるクラブはJ2年間上位2クラブのみ
    • J2からJ3への降格措置なし
    • 交代枠を3人から5人に増員
    • およそ4か月の中断及び日程をずらして予定していた全試合を消化する
一時的な運用として、降格なしとプレーオフの休止はインパクトがありますが、

特に4か月延期した試合をシーズン内に予定通りの試合数消化する運用がとられたため、

J2では夏の9連戦が発生するなど、各カテゴリでこれまでになかった超過密日程が発生し、

クラブ所属の選手やスタッフへのコロナウイルスの感染拡大も相まって選手への負担やケガなどにつながるといった厳しいシーズンとなりました。

一方で、一時的な措置として取られる予定だった交代枠の増員は恒久的に採用されるようになり、海外リーグの試合でも交代枠5人のルールが一般的になるなどあっという間に国際標準となりました。

2022年のカタールワールドカップでも5人交代制が採用されました。

Jリーグの再開(観客のいないスタジアム)

2020シーズン(リモートマッチ)

2020シーズンは再開されたものの、再開当初はリモートマッチと呼ばれる実質的な無観客試合として現地観戦はできず、

試合観戦をするには地元のテレビ局の放送を見るか、DAZNといったサブスクリプション(サブスク)を介して視聴するしかありませんでした。

無観客試合の仕様は以下のようなものでした。
  • ホーム及びアウェイの試合において観客を入れずに試合
  • チャントは録音したものをスタジアムで流す ※2020シーズン途中から採用
Jリーグにおいて無観客試合はリモートマッチと呼ばれ、6月から9月まで運用されました。

以降は収容人数制限を設けて運用されるようになりました。

Jリーグの現地観戦の再開(静かな観客席)

2020-2021-2022シーズン(収容人数制限)

2020シーズン末から収容人数制限を設けての有観客試合が開催されるようになりました。

2021シーズン以降もしばらく引き続き観客の収容人数制限を設けての運用が続きます。

有観客試合開催当初は、観客5,000人以下やスタジアムの収容人数の半分以下などの制限がつけられ、

ビジター席は解放しないことやマスク着用義務も設定され、声出し応援なども禁止されていました。

コロナの感染状況を見て、徐々にビジター席の開放もされるようになってきましたが、

声出し応援の禁止やマスク着用義務は継続して運用されました。

コロナ禍のサッカー観戦は主に以下のルールを適用して運営されていました。
  • スタジアムの収容人数の50%以下もしくは5,000人以下で運用(多いほうを採用)
  • 不織布マスクの着用義務
  • 隣との間隔をあけた座席
  • ビジター側サイドスタンドの開放禁止(徐々に緩和)
  • 声出し応援禁止
  • 指笛の禁止
  • タオルマフラーを振り回すなどの行為禁止

戻りつつあるJリーグの日常(声出し応援の再開)

2022シーズン(一部試合による声出し応援検証)

2020シーズンから続いた収容人数制限は2021シーズンも続き、2022シーズンも継続して実施されています。

そんな中、声出し応援再開に向けて2022年6月よりごく限られた試合でエリアを限定した声出し応援の実証実験が行われました。

検証は、ゴール裏の一部のエリアで行われ、マスクをつけての声出し応援をしてコロナウイルスの感染拡大やトラブルが起きないかということを目的に複数試合で行われ、検証結果として問題ないことが確認されました。

検証条件は以下の内容です。
  • マスクを着用していること
  • 客席は間隔をあけること(座席の両隣1席分開ける)
  • 声出しできるエリアはサイドスタンド(ゴール裏席)の決められたエリアのみ

2022シーズン(ゴール裏声出し応援開放)

一部試合での声出し応援検証で問題ないことが確認されたことで、

2022年9月から多くのリーグ戦・カップ戦で声出し応援が解放されました。

ここでの開放はスタジアム全体ではなく、検証と同じく一部声出し応援エリアが設けられ、主にゴール裏席に限定されました。

完全開放ではありませんが、丸2年以上声出し応援ができなかったこともあり、ゴール裏からはチャント(応援歌)が響くようになり、スタジアムに活気が戻ってきました。

戻ってきたJリーグの日常(収容人数制限・声出し応援制限の終了)

2023シーズン(観戦における制限撤廃)

2022シーズンまではスタジアムの収容人数や声出し応援がサイドスタンドの一部に限られるなど制限がありましたが、

2023シーズンからはそのような制限は一切取り払われての運用となりました。

満員近くのスタジアム収容が可能となっただけではなく、

声出し応援もサイドスタンドだけでなく、メインスタンドやバックスタンドでもできるようになりました。

また、マスクの着用も必須ではなくなったのでコロナウイルス感染前のスタジアムの風景が戻ってきたといえるでしょう。

さいごに

新型コロナウイルスによるJリーグの中断期間や再開後にしばらく続いたリモートマッチは、

Jリーグの現地観戦や声出し応援といった娯楽の機会を失うといったサポーターにとっては長くつらい期間になりました。

一方で、この長く苦しい期間には期間限定で新たな楽しみ方をできたというのも事実です。

チャントが鳴りやまないスタジアムでは聞こえなかった、ボールを蹴る音や選手の声、監督の指示などが現地観戦のみならず映像越しにもよく聞こえるなど、普段ピッチでどのように選手や監督が戦っているかを見る良い機会になりました。

そして、中断期間再開後の過密日程を考慮して、それまでの1試合の交代枠が3人だったものが5人に増えるなどルール改訂のきっかけにもなりました。

当時は決して良い受け止められ方はしませんでしたが、

そのような期間があって今の現地観戦やチャントを歌えるといったJリーグの日常のありがたみを感じることができるようになりました。

今回はコロナウイルス感染拡大による中断期間から、スタジアムに日常が戻るまでを解説してきました。

過去を知ってスタジアムでの観戦を楽しむきっかけにしていただければと思います。